医業承継の基本 ・・・一般社団法人 日本医業承継機構 からの引用です。

ここでは「医業承継」における最も基本的な事項を4点(A~D)を申し上げます。

これから医業承継したいとお考えの院長先生、現在は勤務医で独立開業をお考えの先生が、新規開業ではなく「医業承継」を検討する上で最も必要と考えられる点について述べます。

<コラム>

上の写真は、「宇都宮大学 流体工学研究室」のサイトから引用させて頂きました「タンポポの綿毛」です。

この綿毛は野を吹き渡る風によって種子を遠方に分散させるため、その形態は気流を効果的に利用し、「浮遊性能」を最大限に発生できる構造と考えられています。

風に飛ばされた種は、その地で芽が出し、つぼみを経て、花が咲き、やがて枯れ、土に戻ります。 

  ・・・・ヒトも似たように、生まれ出て、輝いて育ち、勢いのある人生を経て、やがて初老を迎え、ヒトの世話になり、人生を終えます。

花も、ヒトも咲き誇るだけではなく、枯れゆく過程にも 次の世代への準備があります

優雅に咲き誇った後、散りゆく花のように、人生も同様に枯れ果てますが、決して何も残らないと言うことはありません。

枯れ果てた花の中にも、次につなげる種が
残されるように、
ヒトも次の世代につながってこそ、先代の事業が引き継がれる事で、命は次の世代の準備を成し遂げたと言えるのではないでしょうか。

年老いても、次につながってこそ、生きた証を残せると考えることも出来るのではないでしょうか。”

(A)仲介者、仲介業者は中立的な立場であるかどうかの判断  ・・・あなたは仲介業者または仲介者の利益相反を否定できるか?

あなたがこれから、あるいはこれまで医業承継で相談した相手あるいはこれから相談する相手は、「売り手または買い手の一方だけが有利になり、他方が不利益を被る(利益相反(りえきそうはん)」を排除できている仲介者かどうかを見極める必要があります。

売り手の場合は、買い手のことだけでなく、まず初めに仲介者そのものを見極める必要があります。
・・・売り手の先生は、これから退任、あるいは退職しますが、買い手の先生は医院のリフォームや設備の入れ替えを考えている場合が少なくありません.その際、買い手の先生と仲介者がつながっていると仲介者がリフォーム業者と関連があったり、医療機材の取扱会社、あるいは医薬品卸業者の場合には、仲介者にとって買い手の先生とつながっていく傾向は否定できません。その結果、売り手の先生にとっては不利な仲介契約となる可能性が否定できません。


買い手の場合でも、売り手の事を考える前に、売り手を探してくれる仲介者が双方にとって、中立であるかどうかを見極める必要があります。
・・・・仲介者が売り手の先生とつながっていると、様々な情報が売り手の先生から買い手の先生に情報が流されることが懸念されます。
いずれの場合も、仲介者が中立を担保できているかどうかを見極める事が必要と考えます。

1)売り手と買い手のどちらかから利益を得られる関係があるか?を見極める。

医業承継の場合、仲介者あるいは仲介業者が「医薬品卸業者」であった場合、承継の買い手が承継後に「医薬品卸業者」からの仕入れが他の医薬品卸業者よりも多い場合、売り手にとっての「医薬品卸業者」は、買い手に有利な条件を提示したと考えられます。

従いまして、引き継ぎ後しばらくの間は、取引業者のバランスが変わらないなら、利益相反を一定程度排除できた「医薬品卸業者」であったと判断できます。

この「利益相反」で中立的な仲介者である事を継承の過程で判断しなければなりません。
・・・その理由は、売り手にとって不利な仲介となるからです。
また、買い手の先生は、譲渡価格の面で仲介者が有利な条件を提示され、「お得な売買契約」であるように見えても、引き継ぎ後に残った職員から、経営上の問題点や不正請求、時間外労働賃金の未払いなどの労働基準法違反があった場合、その責任は法人が追わなければなりません。確かな調査は、顧問税理士でも必ずしも把握できていない場合がございます。

その際、売り手と買い手の双方が負うべき責任の所在や義務について中立的な契約書でなければ、買い手の先生にとっては、自らの問題ではないことに対処を追わされることになります。

売り手及び買い手の先生の問題の発覚の多くが契約後あるいは承継後でなければ解らないことがある事を前提とした契約書の作成でも、やはり仲介者の中立性が「契約の信頼性」につながると考えられます。

2)仲介後の評価 ・・・仲介者は「利益相反」でなければならない理由

仲介者の利益は、売り手及び買い手のからの仲介手数料だけでなく、引き継ぎ後、地域の患者さんからも社会的な評価を受けると考えられます。

院長交替後、地域の患者さんに喜ばれる可能性と、承継が批判される可能性を比較することで、仲介者の「利益相反」が判定されます。

例えば、継承後、売り手あるいは買い手のどちらかから、仲介の問題を指摘されたとすれば、その仲介者は「利益相反」を行ったと判断されます。

また、地域の患者さんから、前の先生から聞いていたことと違ったとか、今度の先生はこれまでとは違って、相談しにくいと思われるようであれば、「ほぼ利益相反」と判断されます。

最も確かな見極め方は、「引き継ぎ前後で職員がどう思っているか?」を確認することで最も明らかに評価・判断されます。

従いまして、売り手または買い手の先生は、引き継ぎ後の状況に視野を広げながら、仲介交渉過程で「仲介者の中立性」を見極める事が求められます。

3)説明もなく診療や処方を変える ・・・承継後、後任医師の患者対応が変わる?

前任の先生の診療や処方を、患者さんの承諾もなく変更する場合、その理由を尋ねても納得できる説明ではない時、多くの場合、診療報酬(医療費)が上がるような診療を患者さんに勧めたと判断される可能性が大きいと思われます。

長年、通院し処方されてきた内容を、患者さんに説明もなく処方を変える場合、患者さんの利益よりも医療者側の利益を優先しているのではないでしょうか。

他にも、来院頻度を増やされたり、検査項目が増えていれば患者さんが負担する医療費は上がります。
・・・従いまして、来院頻度が増えたり、検査項目が増える理由を後任の医師に説明を求めて下さい。
前任の先生は、長年のかかりつけ患者さんの医療的な状態だけでなく、家族構成や経済状態まで把握し、負担の少ない診療や処方を選んでいたのかも知れません。

後任の先生の日々の診療の一つ一つが患者さんとの信頼関係を築き上げるための対応でなければ、患者さんとしては安心して診て頂けないのではないでしょうか。

4)社会的バランス

後任の先生は、前任の先生が診療所を譲渡し、ほぼ類似の診療科で医療を提供する医師であろうと地域の患者さんは期待し、同様の診療が受けられると考えておられることが多いのではないでしょうか。

そのため、後任の先生は、地域の方々との対応に不慣れな部分があったとしても、相応の誠実さや謙遜な対応で、地域の方々との関係を構築しようと努めておられるでしょうか?

後任の医師は、ほぼ間違いなく前任の医師よりも年齢的に若く、新しい医学を学び、新しい治療や臨床を経験してきています。
そのため、よりよい医療を提供しようと考えるあまり、説明もなくこれまでの診療を否定したり、新たな治療を勧められた場合、その医師の対応に誠実さが感じられるでしょうか?

前任の医師に比べれば、新しい医学知識があっても、患者さんの家庭的あるいは社会的事情や経済的問題を把握できていませんので、患者さんの思いや価値観まで把握し出来ていません。
前任の医師は、安くて副作用の少ない処方を患者さんの事情をくんだ上で、処方していたのかも知れません。

治療は、単に科学的あるいは医学的な判断だけでなく、患者さんの考えや希望を反映した医療を望まれているとき、後任の医師は一方的にこちらの方が良いと判断した治療や処方であっても患者さんに確認する事が望ましいのではないでしょうか。


事業譲渡契約の交渉過程においても、また契約の執行(決済)後であっても、利益相反の開示を無視する、あるいは開示しなかったらどんな承継になるでしょうか?
・・・売り手あるいは買い手の先生のどちらかから仲介者がより多くの利益を得られる選択をするでしょう。
その結果、地域社会における役割は、利益を得るだけの目的のための承継に過ぎません。
これでは、売り手ないしは買い手側のどちらかに対して不満を抱かせる承継と言えるでしょう。
加えて、職員や地域の方々にとっても信頼される医療機関としては認識されにくいのではないでしょうか。

 

(B) 事業価値算定

仲介者としての「日本医業承継機構」の姿勢と同様、「Beyond医業承継」も中立的な立場で、医療機関の承継をお手伝いさせていただきます。

適正な事業価値算定が最も難しい事とされています。

医療機関の承継を実現するには適正な事業価値算定が重要になります。譲り渡し側にとってはより高い評価を望み、譲り受け側にとっては求め易い評価で低廉な譲渡が出来ることを望まれます。

譲り渡し側に適正な算定額を超えた価値での譲渡が可能と説明し案件を受諾することも可能ですが、その場合は承継が実現しないことや譲り受け側が必要以上に重い負担となり、結局は医療機関として継続できないことになるかも知れません。

「Beyond 医業承継」では、利益追求を第一義にするのではなく、地域の医療インフラを守ることを経営理念としているためにも適正な算定価値での承継を目指します。

(C) 譲り渡し ・・・地域医療の継続のために

医療機関は地域住民の重要な生活インフラの一つです。

生活インフラとは、日々の生活を支える基盤となる機能の一つで、「毎日の生活を支えてくれているもの」のこと。生活の基盤、生活の土台、あるいは「生活必需品」を意味することもあります。

特に日常生活に必要となるインフラは「ライフライン」と呼ばれ、「電気」「ガス」「水道」「通信関係」「交通関係」の5つが該当します。

医療機関は、必ずしも毎日の必要性が感じられるほどの生活基盤では無いかもしれません。

しかしながら、身体の具合が悪いとき、すなわち、非常時には必要な役割を担っています。

その地域の医療機関で後継者が不在のとき、医療機関は閉院の選択肢を選ばなければなりません。

ところが自らの医院の存続は、地域にとって医療機関がなくなることは非常時におけるインフラの機能が一部消失してしまうため、高齢化した地域社会にとって、何かと不安です。

第三者に承継することの最も大切な事は、地域医療の存続につながることです。

また、医療機関が存続することで従業員の雇用を守ることにも繋がります。

一方で承継を検討するにも信頼がおける相談先がいないことが一番の不安要素とされています。

当「Beyond 医業承継」は、利益追求ではなく地域の医療インフラを守ることを経営理念としています。

また、承継にあたり前任の先生がこれまで培ってこられた地域社会とのつながりや信頼関係をなるべく残せるような承継方法や譲り受け先を選定したいと考えています。

(D) 譲り受け ・・・安定した事業の継続

日本の医療費は年々増加しており42兆円を超えています。

さらに少子高齢化も急速なスピードで進んでおり、医療保険制度が根幹から揺らいでいます。

こうした中でも新規医療機関の開業は増加傾向にあり、医療機関の競争は激化しています。

従いまして、今後は患者さんから選ばれる医療機関として生き残っていく上で、他の医療機関との差別化が求められます。
・・・・すなわち、医院経営や診療所の維持には、経営戦略などの取組が必要となるでしょう。

このような状況下で既存の医療機関を「譲り受け」することは、安定した開業に繋がります。

これまで培ってこられた医療機関の実績を引継ぐことで従業員の確保や患者様の引継ぎ等により、初期投資を抑えた開業(事業の開始)が可能になります。

難しい立ち上がりの認知度向上や患者様獲得をある程度見込んでスタートとすることが出来ます。

これらのリスク軽減により安定した医業の継続が可能となりますので、結果的に医療機関の継続性維持されますので、地域医療に貢献することも可能となります。

他方で、継承を受けた先生にも様々なご事情が有り、それぞれの専門分野があり、またこれまでの経験と人脈があることでしょう。

しかしながら、最も大切な事は、独自の専門領域で診療されない限り、現状の維持をどの程度把握できるかによります。

1)残った職員がいても、自我性が強ければ、これまでの職員の医療事務の業務や判断に、経験がないにもかかわらず医師で、院長あるいは理事長であるという立場で指示・命令した場合、職員はその方針に付いてきてくれるでしょうか?

2)仮に、前任の院長が行っていた診療よりも、後任医師の医学的判断が医学的に正しくても、患者さんは前の先生と比較します。その際、患者さんの満足度を把握してなければ、せっかくの経験や最新の医療も患者さんに伝わらない可能性もあります。

3)これまでの経験を発揮しようとするばかりに、診療所としての雰囲気や職員の雰囲気にまで影響を及ぼす自我性が地域の患者さんのみならず、地域の方々との関係を損なう方向になっていないかを顧みる冷静さは備わっているでしょうか?

4)すなわち、せっかくの長年の前医院のシステムや人材を後任医師が生かせるかどうかで、「これまでのかかりつけ患者さんを引き継げるか」、「これまでの業務になれた職員との信頼関係を築けるか」につながることから、経験豊富な専門領域があっても、新たな患者さんを獲得するには相応の時間を要します。それまでの間、少しでもこれまでのかかりつけ患者さんの診療を継続できるよう、患者さんとの信頼関係の維持に努めなければなりません。

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