医療法人とは
法人とは、法律上の権利・義務が認められた団体組織です。
具体的には、会社や労働組合、私立学校などが法人に該当します。
これらの組織には、物品の売買や所有、契約、裁判において、人と同じように法律が適用されます。
その中でも、医療活動を行う事を法的に認められた組織が医療法人と言われます。
<法人と個人事業の違い>
法人の事業活動は、法人が土地や建物を所有する事が出来ますので、一般的に個人事業よりも事業活動に持続性期待されます。
法的に「医療法人」は、次のように定められています。
医療法人は、提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすように努めなければならない。 (医療法第40条の2)
すなわち、一般的には個人事業に比べ、事業の継続性のための権利が与えられている分だけ 組織としての透明性と地域医療における役割が期待されている医療機関といえます。
従いまして、医療法人は、事業の継続性、透明性と地域における役割を担っているのですから、この観点からも「事業を引き継いでいく」ことが社会的にも期待されていると言えます。
法人化した診療所の経営上の収支と、医師個人としての家計の収支を明確に分離できます。
金融機関等に対する信用が高まり融資が受けやすくなるので、経営基盤の安定化につながる。
法人の所得から役員への給与を経費にできます。→個人事業では、事業上の利益がすべて個人の所得として計算され、事業主自身に給与を支払うことはできません。
所得を分散した上、法人の経費にできるので、節税方法を検討できる。
また、個人事業では、所得税に適用される超過累進課税率から解放され、法人税の2段階比例税率が適用されます。
社会保険診療報酬について源泉徴収されなくなります。
個人事業としての診療所の場合、社会保険の診療報酬に対して源泉徴収されますが、法人では全額回収することができ、収支から「法人税」を支払います。
役員の退職金の活用が可能になります。
個人事業では退職金という考え方はありませんが、法人の場合は退職金を支払うとともに経費にできます。
しかも、個人事業時代の通算分は、途中から法人化しても損金算入できない(福島地裁H4.10.19判決)ので、早めに法人化したほうが有利。
分院開設、介護事業への進出が可能になります。
介護老人保健施設、訪問看護ステーションなど、介護事業を行うことができます。。
また、分院の開設には、医療法人化が必須。移転の際にも、空白期間をつくらなくて済む。
法人契約の生命保険の活用が可能になります。
法人の場合、全額ではないものの費用とすることができるので、リスクマネジメントしやすい。資産の形成もしやすい。
自由に使えるお金は、個人事業に比べて制限される。
医療法人の理事長及び役員は、役員報酬を受け取ることになり、役員報酬以外の資金は自由に処分できなくなります。個人事業では残ったお金は自由に使用できます。
医療法人化の際、運転資金名目の借入金は法人に引き継げません。
法人になる際、運転資金の部分は引き続き個人が払い続けなければならない。
設備投資のための借入金であれば法人に引き継ぐことができ、利息は損金に算入できる。
医療法人設立費用および毎年の手続きのため、費用と手間が増えます。
医療法人では、法務局に役員変更等の登記が、都道府県知事に決算書類の提出が義務づけられ、その費用とその手間が増えます。
メリットとして上に示したメリットの反面、「医療法人とは」で述べた「医療法人は、提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすように努めなければならない。 (医療法第40条の2)」と言う点は、見方によっては楽なことではありません。