「のれん分け」とフランチャイズ

「 のれん分け 」とは

会社で働く社員に対して、自社の商標や経営ノウハウを使用して事業経営することを認める制度をいいます。
古くからからある制度で、長年仕えた奉公人が一人前になると、主人が奉公人の労に対する恩返しを目的として、奉公人の独立を支援していたことがはじまりといわれています。

現代では、飲食業や美容業など、働き手の独立志向が高い業界を中心に、人材採用の円滑化、社員のモチベーションアップ、多店舗展開の推進などを目的として、フランチャイズシステムを応用した形で取り入れられています。

<商標>

商標とは、一言で言い換えると、商品やサービスを他の類似品や類似サービスから区別するトレードマークです。

「コシヒカリ」や「松阪牛」、「コーラ」、「ハローキティ」などが商標です。
すなわち商標は、同じような商品やサービスが大量にあ
る中から、本当に欲しいものや自分の商品・サービスを選ぶヒントになる呼び名を指しています。
自社が提供するサービスや商品を他の商品と区別するために使用する標識(トレードマーク)
を指してします。

<参考情報> CoCo壱番屋は、「のれん分け制度」か フランチャイズか?

<のれんの意味 及び や営業権との違い>

「のれん」とは会計基準で定義された用語で、具体的には譲渡対象の医院やクリニックの時価(純資産)と実際の買収価格の差額を意味します。

「のれん」と似た意味を持つ用語として、「営業権」があります。
この2つはほぼ同じ意味を持ちますが、厳密にいうと譲渡価格の考え方においてのみ違いがあります。
・・・・あくまでも考え方の違いであって、意味的にはほぼ同じ意味と私は考えます。

「のれん代の考え方」

 のれん代は、最終的な譲渡価格から純資産を減算する価値、あるいは純資産に含まれる「知名度、伝統評価額」という考え方のように思われます。

ですので、譲渡対象の医院やクリニックの総合的な価値を評価し、譲渡価格を算出します。
その譲渡価格から譲渡対象の病院やクリニックの純資産を引くことによって、のれん代が算出されます。

のれん代=譲渡価格ー譲渡対象の純資産

書き換えますと

譲渡価格=譲渡対象の純資産+のれん代

「営業権の考え方」

 営業権は、譲渡対象の医院やクリニックの純資産に価値を加算するという考え方をします。

営業権=譲渡価格-譲渡対象の純資産

書き換えますと

譲渡価格=営業権+譲渡対象の純資産

・・・・限りなく「のれん代」≒「営業権」 ・・・のように思われますが、

税込み価格の売値の表示法を「のれん代」、
税別価格の売値に対する税額を「営業権」と言っているようにも思われますが、よほど利益率の高い場合以外にはどうでも良いかな? と思います。
要は、「売り手」事業のプライドのようなイメージかと思います。

さて、「営業権」とされている定義よりも、大手の仲介会社が定める「営業権の考え方」も、それぞれの会社独自の定義に過ぎません。・・・要するに、勝手に決めただけです。
どうやって、「もっともらしく、勝手に決めたのか?」の一例は、次の通りです。

T医療法人が承継され、理事長及び役員が変わるります。
仮に、同じ場所で承継ではなく新規に開業すると仮定して患者数がT医療法人の80%の人数になるまでに要する期間を1年と仮定した場合、
医業承継することによって新オーナーが得ることができる収入の見込み増加額を次のように算定します。

現状の月間収入×80%×12ヶ月÷2=4.8カ月、
例えば、月額の営業利益を500万とすると、 500万×0.8×12/2=2400万

この算定方法による「のれん代(営業権)」は、2400万/500万=4.8ケ月 の月額収入(営業利益)と勝手に定めて、もっともらしく言っているだけです。

フランチャイズとは

一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会( JFA )は、フランチャイズを次のように定義しています。

(社)日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の定義

フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が、他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。

これを簡単にまとめると、フランチャイズとは以下の三つの要件を満たすものといえます。

      1. フランチャイザー(本部)は、「事業が成功する仕組み」を開発し、その仕組みを、加盟者(フランチャイジー)に提供します。
      2. 加盟者は、本部から「成功する仕組み」を提供される見返りとして、本部に対して加盟金やロイヤリティなどの対価を支払います。
      3. 本部(フランチャイザー)と加盟者(フランチャイジー)は各々独立した事業体であり、フランチャイズ契約に基づき共同事業を行います。

        例えば、一昔前の理容業の多くは、のれん分けが多く、コンビニ店の事業はフィランチャイズです。

<参考譲歩> ・・・ラーメン店の「のれん分けとフランチャイズ」例から、両者の比較

上記リンク先は、「うまみ分け」というラーメンのフィランチャイズ店の独自戦略を示した表です。

のれん分けとフランチャイズの違い

のれん分けとフランチャイズの大きな違いは、「加盟対象」にあります。

具体的には、フランチャイズの加盟対象が「それまで本部とは関係のなかった第三者」であるのに対し、のれん分けでは「自社で働く社員」が加盟対象とされます。この違いが両者の制度のあり方に違いをもたらします。

例えば、フランチャイズの場合、加盟希望者は本部事業についての知見も経験もありません。そのため、本部は加盟者に対して、開業前に必要な知識や技術を習得するための研修を十分に行っておく必要があります。

他方、のれん分けでは、社員は働いている間に事業について知識や技術を一定程度習得しているので、フランチャイズと比較すれば、研修内容は簡易なものす。

医療分野でも、「のれん分け」の形で、一定程度の技量と経験を積み上げた医師の独立を支援するために、技術者や看護師、事務員まで養成した上で、新規開業を支援する分野もあります。

<のれん分けで成功するためのポイント>

のれん分けで成功するためのポイントは、次の2点とされています。

① のれん分けする独立者との信頼関係を見極める

② しっかりとした契約書を用意する

信頼関係のある元従業員に対するのれん分けであっても、お互いの権利と義務を契約書に明記して、契約を締結しておく必要があります。
・・・・「のれんわけ」の時点では信頼関係があっても、互いの気持ちが離反した場合、お互いの人生に及ぼす影響が少なくありませんので、想定される範囲内で「意見や方向性が違った場合に備えたお互いの限界を明確化」し、書面として有効性を持たせる内容で文章を残す範囲でしか、解決を期待できないと考えておきましょう。

医業承継は「のれん分け」か「フランチャイズ」か?   ・・・・・「のれん引き継ぎ」、と考えるならそれなりの慣習や特徴を維持する。

多くの場合、極めて短期間(1年以内)で承継する医業承継は、「のれん分け」ではなく、「のれん借り」と考えられます。

「のれん分け」では、別店舗を構えますので、医業承継では「医業を引き継ぐ」事から「のれんを継ぐ」と言えるのではないでしょうか。

当然、継承後は、「従来の患者さんや診療体制を引き継いだ」上で、さらに自らの経験と専門領域を発揮することで、引き継いだ事業を発展させられれば、元院長にとっても新院長にとっても、また地域の患者さんにとっても望ましい引き継ぎと評価されるのではないでしょうか。

すなわち、「のれんの引き継ぎ」と考えられるような事業承継の場合には、それ相応の前役員の慣習であっても、後任の医師はかかりつけの患者さんに対する影響を配慮した対応が求められるのではないでしょうか。
従いまして、経済評価とは異なる部分で、これまでの患者さんの要望を踏まえた判断を後任の医師に求める場合には、それなりの書面を残して約束を担保しておかれることをお勧めします。

同時に、後任の医師は、前任の理事長が慣例的に対応してきた部分でも、リセットを希望されるならやはりその考え方を前任役員に説明した上で、約束事として書面化しておかれることが、継承後の考えの違いに伴う摩擦を減らせるのではないでしょうか。

・・・・すなわち、譲渡価格、売買価格で合意していれば、この部分で後々もめることはありませんが、書面に残してない部分で、お互いに譲れない部分を書面化しておかれることがトラブルを避ける方法であるように考えます。
そして現実には、書面に残されていない部分で、お互いが「これくらいは自分の裁量で対応したい」と考えているような部分での意見の違いが、表面化し、引き継ぎ途中でもめる原因となる事が少なくないからです。

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